上州準西国三十三観音

上州準西国三十三観音 水彩画 蓮光寺 休日画人の古刹めぐり

キーワードは『新田』だった。

群馬県の太田市の周辺にはたくさんの霊場がひしめくように存在しています。今回の上州準西国三十三観音霊場もそのひとつ。

なぜここに多くの霊場が残っているのか?調べ行く中、現在は土地の地名には残っていないものの『新田』なるキーワードに行きつきました。平安時代に律令制が整備された当時、すでに倭名抄なる書には新田郡の記載が出てくるらしい。源氏の流れをくむ新田氏。新田一族により新田荘が形作られどんどん拡張されていったようです。後に新田義貞を輩出し、地域文化の中心的な場所だったことは想像に難くありません。江戸期に入り庶民文化が一斉に花咲くころ、各地では観音霊場巡礼が盛んに行われていました。文化都市であるこの土地に写し霊場が形成されるのは当然の成り行き。この土地の秀逸なところはひとつの写し霊場だけではなく、西国三十三、坂東三十三、秩父三十四の日本百観音のすべてをこの土地に写したこと。当時の『新田』の隆盛を物語るひとつの証左とも言えるかもしれません。

今回の口絵の蓮光寺は、上州準西国三十三観音霊場の第十一番札所。すこし頼りないような山門をくぐると広い空地?本堂は少し離れた、しかも斜めに構えた方向に建立されています。絵は山門の下よりそんな情景を描写しています。今回の巡拝で感じたことは衰退がかなり進行していること。百観音が後世に伝承されんことを祈るばかりです。

by 休日画人