石巻牡鹿三十三観音

石巻牡鹿三十三観音 水彩画 法山寺 休日画人の古刹めぐり

東日本大震災の爪痕。

この地を訪れたのは春。春の陽気とともに各所で散り始めた美しい桜の花を観ることはできたものの、痛々しく残る震災の爪痕を垣間見るにつれ心が晴れることはなかった。今回の石巻牡鹿三十三観音は現在では全札所が広域化した石巻市の市内にある。旧北上川の河口近くから発展してきたこの街は、震災時は逆流した水で旧市街全域が浸水。また港から太平洋までの沿岸部の各浜が壊滅的な被害を受けている。沿岸にあった第十六番札所『濡仏堂』は仏像の台座だけが津波により取り残されたように痛々しい姿を呈しており復興の時を待ち望んでいる。現在は浜辺には巨大な防潮堤が建設され、景観が大きく変化してきている。

今回の口絵の法山寺は、刈田三十三観音霊場の第四番札所。左右対称な景観が美しい。ここは高台にあり幸運にも災難を逃れることができたようである。一日も早い石巻牡鹿三十三観音霊場の復興を願いたい。

by 休日画人